時は7月。きらめく星空を背中に、六代目火影、はたけカカシは執務机にぱたりと突っ伏した。
若い頃と変わらずふさふさと生い茂る銀髪の上へ、ひらりと書類が舞い落ちる。嗅ぎ慣れた、墨の匂いが鼻をついた。
「あー…………」
「ちょっと、しっかりしてくださいよ六代目。まだ宵の口っすよ」
「明るいうちに帰れる生活がしたいのよオレは……」
「無理言わねーでください。はい、これ残りの稟議書。これが済んだらとりあえず今日の分は終わりです」
「そう……って何よこの量」
うず高く積みあがる書類の山に愕然とする。
ただ判子を押せば良いというわけではないのだ。内容を吟味し、差し戻す場合もある。
これでも何割かはシカマルに委任しているというのに、ちっとも仕事が減った気がしない。
「しょうがねぇっすよ。大なり小なり開発の申請が引っ切り無しに舞い込んでくんですから。明日も同じくらい届く予定っすから、お願いしますよ」
「嘘でしょ……」
もう何もやる気がしない。こんなことなら任務を詰め込まれた方がマシだ。
うなだれるカカシの前で、かつての教え子と同期である青年が気遣わしげな声を発した。
「あのー、やっぱ俺明日出てきましょうか」
「だーめ。明日はお前は休みって決めたでしょ。いーから奥さんと一緒にいてやんなさい」
「でも六代目一人に任せられる量じゃ……」
「何とかするって。ちょっとごねてみただけだからさ。ほら、今日ももう帰りな。きっと美味いもん作って待ってくれてんでしょ」
「……うっす」
身重の伴侶が待つシカマルが、少し照れくさそうに唇を尖らせる。
髭を生やして一丁前に見える奴が青臭さを覗かせる貴重な瞬間だ。
カカシに促され扉へと向かったシカマルが、くるりとこちらを振り返った。
「六代目、仮眠室に俺からのプレゼント用意してありますんで、何にせよそれ早く片付けた方が良いっすよ」
「何、プレゼントって」
「すっげー良いモンです。期待してください」
「その笑顔が怪しいんだけど」
くくく、と肩を揺らすシカマルに、かつての仲間の姿が重なる。
カカシが郷愁に浸っているとも知らず、側近はあっさりと執務室を後にした。
「プレゼントねぇ……ま、とっととやっちゃいますか」
今は何より睡眠時間がプレゼントなんだけど、と思いながらも、カカシは紙へ手を伸ばすのだった。
「っあー……」
首を擦りながら廊下を歩く。
執務室の隣はカカシの仮眠室となっていた。執務室より二回りほど狭いその場所は、なかなか自宅へ帰れないカカシにとって今や第二の自宅のようなものだ。
本当はもっと帰りたい場所があるのだけれど、六火を背負っている以上、我儘は言えない。
念のために仮眠室の扉の前で解の印を結んでみるが、何の反応もなかった。
いたずらの類では無さそうだと確信できただけでも良しとする。
今はカカシの補佐役を担ってくれているとはいえ、シカマルも元々同僚の教え子だった人間だ。カカシの元で任務についたこともある。加えてあのナルトの同期であるからして、いたずら心が無いとも限らない。
とにかく寝られたらそれで良い。
静かにノブを回し、あくびを噛み殺しながら一歩踏み入れたカカシは、そのままの格好でしばらく動けなくなった。
ドアを背にした小さなソファに、見慣れたひっつめ髪がぴょこんと揺れていたのだ。
「えっ……」
声が出たのは、それを見てたっぷり十秒もしてからだろうか。
急いでドアを閉め、鍵をかける。この部屋には暗部の立ち入りも禁止しているが、その分出入りは厳しく監視されているはずだ。
ということは、彼――うみのイルカがこの部屋にいることはカカシ以外、周囲の皆が知っていたことになる。
なによ。言ってくれたらもっと早く終わらせたのに、いや、仕事を投げうってここへ直行したのに。
だから誰も言ってくれなかったのだと同時に理解しつつ、カカシはごくりと喉を鳴らしながら一歩、ソファへ近づいた。
「イ、 イルカせんせ?」
声をかけると、見慣れたベストがびくりと揺れた。
そう、見慣れているはずなのだ。なのに、何かが違う。
木の葉の里では忍びすべてに忍服が支給される。額当ては当然として、ベスト、黒の上下、メッシュインナー。脚絆にサンダルまで。イルカなどは教師という職業柄、常にお手本のようにきっちりと着用している。
なのに、なのにだ。
まず、ひとつに結ばれた黒髪の影にいつもは見える額当ての結び目が無い。これはオッケーだ。額当てを外すなんてプライベートモードなのね、先生。
問題はその次だ。
首と腕が見えちゃってるんですけど。
剥き出しの、生身の、健康的な素肌が見えちゃってるんですけど。
しかも何か、首にひらひらしたものがあるんだけど?
ねえ、先生、どういうこと!?
「カカシさん、大きな声出さないで下さい」
「えっ、聞こえてた?」
「聞こえてたも何も、額当てがどうだこうだってずっと喋ってたじゃないですか」
なんてことだ。心の声はすっかり漏れていたらしい。
カカシは咳払いをすると、こちらへ背中を向けたままのイルカに向かって一歩ずつ、ゆっくりと近づいた。
近づくにつれ、心拍が上がっていく。
狭い部屋だ。三歩も歩けばイルカの座るソファに膝が当たる。
「せ、先生」
「はい」
「これは、どういうことなのか、説明してくれるかな」
口布の中、ふうふうと己の呼気がうるさい。
カカシはイルカの真後ろで仁王立ちしたまま、眼下の恋人をじっとりと見下ろした。
首と腕だけではない。揃えた両脚までもが丸見えじゃあないか。
俯くイルカのうなじは、事の最中がごとく赤く染まっている。
恥ずかしいのか、もじ、と両膝をすり合わせるイルカの後ろで、カカシの息子は天を向いていた。
そりゃそうだろう。無理だ。こんなもの、視界の暴力だ。
「あっ」
つ、とうなじに指先を当てれば、イルカが小さく声を上げた。
いつもより少し甲高いそれに、彼の緊張と期待を感じてますます鼻息が荒くなる。
ベストの中に押し込んでいるらしい、ひらひらとしたものが覗いているのが気になって仕方がない。
「ねえ、せんせ」
「ん、ふ……へ、変な触り方、やめてください」
「変なって、こんな?」
「あっ、やだっ」
つつつ、とうなじとベストの合間に指を差し入れれば、イルカがびくびくと肩を震わせた。感度、オール5。ごーかっく♡
イルカが聞けば張り倒されそうな台詞を心の中でのたまいながら、カカシはひらひらとしたものの正体を探る。どうやらこれは、何かの紐だ。
あらぬ期待に息子がびきびきと力を貯める。ますます荒くなる鼻息に、カカシは意識して呼吸を整えなければならなかった。
ベストの中は蒸れて、肌に汗が滲んでいた。空調は適切に効いているはずなので、彼がそれだけ興奮しているのだろう。
カカシは無意識に上がる口角をそのままに、ベストと肌の隙間から指を引き抜いた。
そのまま鼻先に運び、すうう、と匂いを嗅ぐ。甘酸っぱい、恋人の香りが鼻孔を満たした。
「変なことしてるでしょう」
カカシの性癖を知り尽くしたイルカが、俯いたままで呆れたような声を発した。
「してないよ」
「禍々しいチャクラを感じますが」
「オレがイルカ先生に変なことしたことあった?」
「あるじゃないですか」
「例えば?」
カカシの投げた問いには答えず、イルカが小さく頭を振った。
もっと追い詰めても良いが、今はとにかく全貌が見たい。
逸る気持ちを抑えて髪紐に指をひっかける。解こうか少し悩んで、今日はそのままにすることとした。
長い髪を乱して悶える姿も好きだが、結んだまま身をよじる様はより禁欲的で素晴らしい。
カカシは意を決してイルカの前方へ移動した。歩いたのではない。瞬身を用いた。
気付いたイルカが「は?」と言いながら呆れた顔で見上げてきたが、構いやしない。
なにせもう、股間がテントを突き破る寸前だ。
正面から見たイルカはほぼ全裸といって良かった。
裸にベストだ。
正直、彼と恋人になってから裸エプロンをしてもらったことはあった。今もありありと思い出せる至上の夜だ。
だが、今夜はあの夜を上回るかもしれない。
忍びならば一度は夢見たことのある、裸ベスト。なんて良い響きだろう。
その、童貞諸君が言葉だけで射精しそうな状態で、今、目の前に恋人が鎮座している。
「夢なのかな」
「夢じゃないですよ」
「本当に? 触ったら消えたりしない?」
「何の話してるんですか。もう、あなたって人は……」
言いながらイルカが膝の上に両手を乗せる。
年相応に毛の生えた、張りのある腿の上に乗せられた、血管の浮いたごつごつとした手の甲。
「はーっ」
「な、何ですか」
「逆に冷静になりましたよ。人間興奮しすぎると冷静になるものですよ、アカデミーで習いませんでしたか」
「あなたアカデミー通っていないでしょう。もう……そんな状態で言う言葉ですか」
カカシの股間をちら、と見てイルカが言う。
恋人の勃起した逸物など見慣れているだろうに、気まずそうに目元を赤くしているのが愛らしい。ノッてきたらあんなに淫らになるくせ、いつまで経っても昼は淑女のようだ。今は真夜中だが。
「イルカ先生、オレの情緒をかき乱すのはいい加減にして下さい。さ、全貌を見せてもらいましょうか」
「おっ立てといてふんぞり返らないで下さい」
「いいから、お願い! ねえ、見せて!」
がばりと跪いて膝に縋る。
彼の両手を握ってすりすりと頬を寄せれば、イルカがぎょっとしたように身を強張らせ、続いて可哀想なものでも見るかのように眉尻を下げた。
「カカシさん、お疲れなんですね……分かっちゃあいましたけど」
「そうなの! オレったらもう一ヶ月も先生んちに行けてないのよ!? エッチも2週間前におしゃぶりしてもらったきりだし、もう限界なの!!」
ちゅ、ちゅ、とイルカの両手へ口づける。そのまま膝頭にも唇を落とし、ぴちりと閉じた膝の間へ無理やり鼻先を押し込んですううと息を吸い込んだ。
イルカの体臭をベースとして、少しの汗と、真新しい下着の匂い。瓶詰めにしてコレクションしたいくらいだ。
「ちょ、ちょっと!」
頭をぐいぐいと押しやられ、顔を上げた先で真っ赤な頬のイルカと目が合う。
意思の強い瞳が、今は恥じらいに濡れていた。
ああ、オレの恋人はなんて素敵なんだろう。
「もう、わかりましたから……少し、離れて下さい」
言われた通り顔を上げ、イルカの前で正座する。
しかたがないな、と聞き分けのない生徒を見るような目つきで、イルカがこちらを見下ろした。
そして、期待に震えるカカシの前でベストのフロントに手をやり、上から下へジジ、とジッパーを下げていった。脱いだベストをソファの背にかけ、カカシの前にその全体像があらわになる。
待ち望んだその素肌――いや、素肌の上を走る黒い紐めいたものに、カカシの視線は釘付けとなった。
「なっ――」
紐、と思ったものはレースだった。複雑な模様の連なった細いレースがイルカの首から胸元にかけて伸びている。
そして行き着く先の胸元では、あろうことかカカシが大事に育ててきたふっくら乳輪を、花びらを模した白いレースが覆っているではないか。
あまつさえ花びらの中央にはスリットが入っているようで、その合間から愛らしい突起がそっとこちらを覗いている。
白い花びらの合間から見える茶褐色の乳頭。カカシが長い時間をかけて舐めて弄って敏感に育てた、唯一無二の宝石だ。
視線を下げてみれば、鍛えられ線の入った腹筋や、イルカの性感帯のひとつでもある形の良いへそは剥き出しで、黒々と茂った陰毛が見えたかと思うとその下はまた、例のレース紐に繋がった極小面積の布地が彼の逸物をうやうやしく包み込んでいた。
言葉を失うというのは、このことだろうか。
数多の戦線を経験してきたカカシだが、このレベルの緊張感に包まれることはそうそう無い。
口布の下、わなわなと震える唇を片手で抑える。そうでもしないと叫びだしてしまいそうだ。
「……な、なに、その……」
「シカマルが、あなたがお疲れだから癒してやれって……」
「じゃなくて、何なの、その破廉恥極まりないエロいマイクロビキニは!」
「マイクロビキニってご自分で仰ってるじゃないですか」
「そ、そんな、破廉恥な格好……! 一体どこで手に入れたの!」
「通信販売で買いました」
「そんな、エッチなことして……」
「通信販売は別にやらしくも何でもないでしょうが。……でもやっぱり、みっともないですよね。同僚に相談したら、コスプレするのが一番だって聞いたんですけど……着替えてきます!」
カカシを振り落としてイルカが立ち上がる。今にも駆け出そうとするその足に、カカシは必死にしがみついた。
「ちょ、ちょっと待って! そのままでいい、そのままでいて! お願い!!」
「離して下さい! 俺どうかしてたんです!!」
「だめ、待って、お願い先生!」
「わっ」
ドロンと現れたカカシの影分身が、イルカを背後から拘束する。両脇を下から持ち上げるようにして抑え込まれ、イルカがじたばたと足を動かす。が、片方にはカカシがしがみついているので身動きは取れない。
「先生、落ち着いて!」
「あなたがそれを言いますか! いいから離して下さい! 生き恥を晒したくないー!」
「どこが恥なの? 可愛いじゃない」
「「へ?」」
カカシとイルカの声が重なる。
二人して見上げたのはカカシの出した影分身だった。
上忍服を着て、背後からイルカの身体を覗き込んでいる。
「すごくエッチな格好だね、イルカ先生。嬉しいなぁ。オレのために着てくれたんでしょ?」
「は、はい……」
「いいじゃない。もっと見せてよ。ベッド行こうか」
「はい……♡」
「ちょっ、ちょっとちょっと! それオレの台詞でしょ!? 何影分身が出張ってるのよ!」
一瞬でとろんとした目つきになったイルカを抱き寄せる。影分身も離さないものだから、イルカを挟んで間近で睨みつけてやった。
「お前がモタモタしてるからでしょ。いいじゃないの、いつも良い思いしてるんだから、たまにはオレに譲りなよ」
「いつもっていつよ!? もう一ヶ月も先生とイチャイチャしてないのはオレも同じなんだけど!」
「じゃあ三人でする?」
「うーん、それなら、まぁ……って痛っ!」
思わず納得しかけたカカシの腿に、強烈なキックが入った。イルカだ。
「俺を置いて勝手なこと言わないで下さい! 三人は駄目です!」
「先生、前3Pした時おもらししちゃったの、まだ気にしてるの?」
「次は金的しますよ」
「ごめんなさい」
「ってわけだから、お前はだーめ」
「イルカ先生が言うなら仕方ないかな。じゃあね、せんせ。今度はオレとしよーね」
「んむっ」
影分身がむちゅうとイルカの唇を塞ぐ。じゅっぽじゅっぽといやらしい音を立てながらイルカの腔内をなぶり、ちゅっぽんと音を立てて唇が離れていく様を本体であるカカシは唇を噛んで見逃してやった。この程度、あとでいくらでも取り返してやる。
「もーいいでしょ。消えな」
「はいはい」
現れたときと同じように一瞬で影分身が姿を消す。
拘束を解かれ、口づけの余韻でふらつくイルカを今度こそ正面からぎゅうぎゅうと抱きしめて、カカシはその濡れた唇にむしゃぶりついた。
「んっ、ん、うんっ」
もう、先生、悪い子なんだから! 同じ顔だからってすぐにメロメロになっちゃって!
心のなかで詰りつつ、他の男に舐め回された腔内を自分色に染め直す。
ミントの香りが鼻孔をくすぐり、カカシは口づけたまま目を細めた。
行為の前、いつもイルカは歯を磨く。もちろんそんな余裕が無いときの方が多いが、カカシの来訪が分かっているとき、イルカからこちらを訪ねてきてくれるとき、彼からはほのかなミントと石鹸の香りがするのだ。
準備してきたと言外に伝わるその香りを嗅ぐだけで興奮するのは当然だろう。
肉厚の舌を絡め取り、根本から先端へと扱いてやる。途中で上顎をくすぐれば、腕の中でイルカの身体がびくびくと跳ねた。
手のひらに伝わる体温が熱い。
うっすらと滲む汗。背中を撫で回す手に引っかかる紐――
そうだった!
「ぷはっ」
カカシはイルカから顔を離し、一歩下がって彼の全身を見た。
頭の先から、つま先までを舐めるように。
影分身とカカシに挟まれたせいか、胸を覆っていた極小の花びらがずれている。艶のある、茶褐色の乳輪が半分ほどその姿を見せていた。
カカシの視線に気づいてか、イルカが慌ててそれを元の位置へ修正するが、今度は反対側がずれて、ぷくりとした乳頭がこぼれ出てしまう。
イルカは顔を赤くしながらそちらにも指先で花びらを被せ、慎重にその位置を確認していた。
一部始終をじっと見つめていたカカシを、イルカがちら、と見上げた。
唇を引き結び、噛み、それからひと舐めして、胸と股間を両手で覆う。寄せられた胸筋が、むにりと膨らんでその柔らかさを強調していた
「や、やっぱり、俺――」
「隠さないで、せんせ」
口から出た声音は、己でもわかるほど甘く、いやらしいものだった。
「よく見せて。背筋伸ばして、ほら」
躊躇いがちに降ろされた手。丸まった背がぐんと伸びると、花びらに包まれた胸元が突き出された。
浅黒い肌を走る、黒のレース。そこだけ白く浮かんだ花びらがひどく卑猥だ。
イルカの心拍が早い。緊張と興奮を表すように薄く上下する腹の下、レースの向こうにイルカの立派な逸物が透けていた。
触られてもいないのに、それは次第に形を変えてくる。頭をもたげ、伸縮性の無いレースの中で窮屈そうに何かを主張してくる。
「悔しいけど、あいつの言う通りだよ。本当に可愛い、イルカ先生」
「あっ……」
人差し指と中指で、胸のレースに触れる。ひらりと花びらを捲っただけで、イルカが小さく声を上げた。
角ばった彼の手がぎゅうと握られているのを横目に見る。
「ね、せんせ。ベッド行こ? もっと先生のこと可愛がらせて」
しっかりとした顎を撫でる。そのまま耳元へ指を滑らせれば、イルカがくすぐったそうに肩を竦めた。そしてカカシの手を取り――
「駄目です」
「へっ?」
今日何度目かわからない間抜けな声が出た。
「だ、だって、オレのために着てくれたんでしょ? だったら」
「違うんです」
きっぱりと言い渡され、今度はカカシが背中を丸める番だった。
駄目。違う。
最愛の恋人に拒絶され、こんな悲しいことがあるだろうか。あんな格好をしておいて。キスまでさせてくれたのに。
しおしおと萎れる心に反して、己の息子だけはまだ元気に勃ち上がっているのがいっそ惨めだ。
ごめんな、今夜のエッチはお預けだ。あとでシコッてやるからな。
心の中で息子に詫びつつ肩を落とすカカシの手が、ふいにきゅっと握られた。
指の間にイルカの指が差し入れられ、優しい暖かさに包まれる。
「カカシさん、勘違いしてるでしょう」
照れたような、困ったような表情でイルカがカカシを覗き込んでいる。ぽてっとした唇を尖らせ、黒い瞳に少しの笑みが浮かんでいる。
「違うんですよ。言ったでしょう? シカマルに頼まれて来たって」
首を傾げるカカシに、今度はにこりとイルカが笑いかけてきた。
「あなたちょっと働きすぎなんですよ。今日は俺が全部しますから、カカシさんは何もしなくて良いんです。いいですか。わかった?」
「わ、わかった」
「ん、よし」
教師然とした言葉に思わず呆けた返事をすれば、生徒にするように頭を優しく撫でられる。
かぁっこいい……。
素直にそう思って、カカシは改めて目の前の恋人に惚れ直した。
「じゃ、行きましょ」
「きゃっ」
よいせと横抱きに持ち上げられ、カカシの中の内なる乙女がのたうち回る。
こんなに可愛くて格好良くてエッチだなんて、オレの恋人ってやっぱり最高だよね。
先程までの落ち込みが嘘のように満面の笑みでイルカを見上げれば、ちゅ、と額に唇が落ちてきた。
「いっぱい気持ちいいことしてあげますからね」
「せ、せんせぇ……♡」
自分の目がハートマークになっている自信がある。カカシは思わずイルカに抱きつき、首の後ろにあるビキニの結び目を解いてやりたい衝動を必死に堪えなければならなかった。
「カカシさん♡ 気持ちいいですか♡」
「気持ち良すぎて溶けそうだよぉ……」
「ふふ♡ それは良かった♡」
天国。
第四次忍界大戦を経て、死後の世界への憧憬など微塵も無くなったカカシだが、今は「ここを天国とする」と宣言したくなるほどの、至高の心地にあった。
ベッドの上、イルカの膝枕に頭を預け、仰向けに全裸を晒している。
その股間ではいきり立つ逸物が、ローションまみれのイルカの手によってにちゅにちゅと扱かれていた。
浮き出た血管をなぞり、雁首との段差をすりすり♡と撫でられる。
焦らすような刺激にいっそイルカの手を掴んで無理やり扱きたくなるが、ここは我慢のしどころだ。
なぜなら、カカシの頭上には絶景が広がっている。
レースのマイクロビキニに身を包んだ、いや、ほとんど包めていないのだが、そのエッチな衣装をまとったイルカの胸がすぐ目の前にあるのだ。
よく鍛えられた、たわわな胸筋。
張りのある膨らみの、その端で、花びらを模した白いレースに包まれたカカシの大事な宝石がイルカの動きに合わせてちら♡ちら♡と時折顔を覗かせる。
よくよく見れば乳輪の下の方がはみ出しており、白と茶褐色のコントラストに視線が釘付けだ。
「絶景かな……」
「もう、それ言うの何度目ですか」
「だって本当なんだもの」
花びらめがけてふーっと息を吹きかけると、白いレースがひらひらと揺れた。
「あっ、もうっ。いたずらなカカシさんはこうですっ♡」
「んぶっ」
なんということだろう。
イルカのおっぱいが振ってきた。
唇の、ちょうど合間にぷくりと柔らかな、それでいて弾力のある粒が押し当てられる。
花びらのスリットから覗いていたカカシの宝石こと、イルカの乳首だ。
「ほーらほら、おっぱいですよ~♡」
ぐりぐりと強く押し付けてくるのは照れ隠しだろうか。
ボリュームのあるレースが口の周りをざりざりと刺激する。普通だったら結構痛いだろう。だが、今は普通ではない。非常事態だ。
カカシは己のこめかみにびきりと血管が浮くのを感じた。股間はいわずもがなだ。
身体の奥底から力が漲ってくる。今なら巷で流行のかめはめ波とやらも打てるかもしれない。
「えいえい♡ えっ、あ!? やっ、だめっ……!」
舌先でスリットの割れ目をちろちろと舐める。
突然の反撃にイルカが身体を退こうとするが、そうはさせない。手を伸ばし、首の後ろを押さえつけてやれば、イルカがぎくりと身を強張らせた。
「あっ、あっ、だ、だめですって、カカシさんは何もしちゃ駄目なのにぃ」
「れ、ろまっれるろ(手、止まってるよ)」
「そこで喋っちゃだめっ」
この状態で手出しせずというのは無理な話だろう。
カカシは健気にその存在を主張する肉芽を舌先でつんつんと突き、スリットのあわいをほじくるようにして柔らかな乳輪をれろりと舐めた。
汗で蒸れたのか、舌先に塩気が伝わる。旨味成分だ。そういえば夕食がまだだったと思うといっそう漲り、乳輪のみならず周りの皮膚までもべろべろと舐め回してやった。
「んっ、あっ、ちょっと、あんっ」
完全に手の止まったイルカを促すように腰を揺すれば、観念したかのようにおずおずと彼の手が動き出す。
にちゅにちゅと緩く竿を上下しながら、先端をくるくると撫で回され、ぞくぞくと快感が湧き起こった。
ああ、早くこれを突っ込んでやりたい!
胸の内で叫びつつ、カカシはイルカの乳頭へじゅうっと強く吸い付いた。
「ああんっ」
可愛く鳴く恋人の、もう片方の胸へも手を伸ばす。
「あっ」
スリットをかき分け、指先ですりりと先端を撫でてやると、イルカの脈拍が一段と早くなった。
カカシとの愛の日々により小指の先ほどの大きさに育った乳首を、舌と指でくりくりと転がす。時折摘んだり、吸い付いたり、緩急つけて弄ってやればイルカからむわりと青い匂いが漂ってきた。
イルカは濡れやすい。きっと、ビキニにいやらしい染みを作っているのだろう。
「せんせ、気持ちよくなっちゃった?」
乳頭に唇を触れさせたまま問えば、イルカが濡れた目で見下ろしてくる。
薄く開いた唇の端に透明な溜まりを見つけ、カカシは小さく微笑んだ。
リードしてくれるのも嬉しいが、やはりイルカは可愛がられているのが一番似合う。
このまま蕩けてくれるようなら押し倒してしまおうと算段していると、イルカが零れる寸前で唾液をじゅるりと吸い上げた。
「ンもうっ、カカシさんってば」
いけません、とのたまったイルカが、カカシの鼻をきゅっと摘んで上半身を起こしてしまう。
「だめなの? 気持ちよさそうだったのに」
「俺が気持ちよくなってちゃ駄目なんですって」
「いいじゃない、イルカ先生が気持ちいいとオレも嬉しいよ」
「だぁめ。ほら、頭下ろしますよ」
膝枕まで強制終了だ。
ちぇ、と唇を尖らせるカカシを視線でいなし、イルカがカカシの下半身へ移動した。
「失礼しますね」
ぱかりとカカシの膝を左右に割り、その間にイルカが正座をしてちょこんと収まる。
少し恥じらいながら上目にこちらを見る様はさながら少女のようにあどけない。今夜の格好は娼婦もかくや、といったところだが、イルカの清純性は三十歳を超えた今となっても減りも衰えもしなかった。
鼻息が荒くなる。興奮を隠そうともせず、カカシはにやりと口の端を上げた。
「せんせ、何してくれるの?」
「いいから、カカシさんはそこで見ててください」
片手で身体を支えたイルカが、もう片方の手でカカシの陰茎を握った。そうして、胸の花びらへちょん、とそれを押し当てる。
はぁ、と思わず吐息が漏れた。
今しがた散々唇で弄ってやった胸の粒が、今度はカカシの陰茎に口づけをしている。
ちゅ、ちゅ、と花びらの合間から覗く乳頭が、亀頭に触れるたびにぐにぃと潰れ、たわみ、ますます赤く色づいていく。
イルカの鼻からも「ん、ん」と甘ったるい音が聞こえてきて、カカシはこの部屋にカメラを仕込んでおかなかったことを激しく後悔した。
後にも先にもこんな刺激的なプレイは無いかもしれない。いや、頼み込めば実現するかもしれないが、初めて自らこんな破廉恥なことをして恥じらっているイルカの姿は今しか見られないのだから。
静かに悔やんでいるカカシに向かって、イルカが照れくさそうに笑いかけた。
「カカシさん、見えますか? 俺のおっぱいとカカシさんの……ち、ちんぽが、キスしてるとこ」
「う、うん♡ 見えるよ♡ 気持ちいいよ♡」
普段あまり口にしてくれない下品な言葉に満面の笑みで返すと、イルカが心底ほっとしたように「良かったぁ」と笑った。
付き合い始めた当初は触れ合うだけでも終始顔を隠したり、いざ繋がろうとしても体位はバックしか許してもらえなかったり、と苦労したことを思い出す。当時ほどの拒否は無くなったが、今も基本的には恥ずかしがり屋のイルカだ。
なのに、こんな破廉恥な格好をしてカカシに尽くしてくれているのだから、惚れ直さない方がおかしな話である。
カカシは性的な興奮をしのぐ幸福感に包まれ、一人うんうんと頷いた。
花びらのレースに亀頭が擦れて少し痛いことなんて、どうでも良いのだ。
陰茎の根本をくちくちと緩く上下されながら、先端へはくにくにと優しく、時折ずりずりと強い刺激が与えられる。
その様子をつぶさに観察しながら、もどかしい快感についつい腰を浮かせてしまう。
「こぉら、カカシさん、動いちゃだめですよ」
「だってぇ……」
「仕方がない人ですねぇ。じゃあ今度はこっちでキスしましょうね♡」
「あっ♡」
ぶちゅう、とイルカの唇が亀頭へ吸い付く。
敏感な丸みをれろりと舐め回されたかと思うとすぐさま暖かくぬるぬるとした腔内に迎え入れられ、カカシは待ち望んだ刺激にほう、と息を吐いた。
肉厚の舌が竿に絡みつき、頬の内側の温かい肉がきゅう、と締め付けてくる。
ぐぽぐぽと下品なほどの音を立てながら頭を上下するイルカの、結んだままの髪がぴょこぴょこと揺れた。
少し狭い額に、青年らしく黒々と太い眉、その下で伏せられた瞼は、薄く色づいていた。
昼間、子どもたちの前できらきらと輝く瞳が今、情欲に濡れている。
眺めるほどに愛しさが募り、カカシは彼のこめかみをそっと撫でた。
何もかも初めての身体を拓いたのは自分だ。
カカシしか知らない身体が、カカシを想って欲に濡れている。
このままどっかに閉じ込めちゃおうかな。
今まで何度と無く浮かんだ考えが頭をよぎり、カカシは溜まった唾液とともにそれを飲み込んだ。
「せんせーって本当、罪作りだよねぇ……」
「ふぁにふぁれふは?(何がですか?)」
「っあー! そこで喋んないで! ごめん! ごめんなさい!」
「ふふ、さっきのお返しです♡」
いたずらっぽく微笑むイルカに白旗を上げる。
イルカはカカシの鈴口をちろちろと舐めると、裏筋を辿って根本にぶらさがるものへと顔を埋めていった。
ふにゅう、と双球の間に鼻を埋め、すう、と匂いを嗅いでいる気配がある。
くすぐったさに「はは」と声を上げると、続けて片方の球がねっとりとした咥内へ含まれた。舌で転がされ、くるくると舐め回され、じれったいようなむずむずとした快感が広がる。
「っ、はぁ、気持ちいいよ、せんせ」
引っ詰め髪をそっと撫でる。生え際を親指でなぞると、ぴくりと肩が揺れた。広い肩幅は間違いなく男のそれで、盛り上がった筋肉や肌の浅黒さは理想的な男らしさといってもいいだろう。
そんな、男性的魅力に溢れた彼が一心不乱に己の股ぐらにしゃぶりついているのが堪らない。
Tバックという、ほとんど何も守っていない黒い紐をまとった尻が左右にふり♡ふり♡と揺れていることに、イルカは気づいているだろうか。
~ここから受けによる攻めのアナル舐め~
れろれろと交互に球を舐めながら、空いた手で竿をぬちぬちと擦られる。
緩慢な刺激に焦れてきた頃、徐ろに顔を上げたイルカがぐい、とカカシの腰を浮かせ、その下に枕を挟んだ。
おっ、と眉を上げる。
カカシの視線に気づいてか、イルカがちらりとこちらを見てはにかんだ。
「いいの? オレ、昨日も風呂入れてないよ」
「いいんです。カカシさんにもっと、気持ちよくなってほしいから」
「そう、じゃあお願いね」
イルカの前でぱかりと股を開く。
彼の唾液で濡れた股間、いやらしい匂いを放っているだろう性器の、更に奥へイルカが顔を埋める。
「せんせ、大好き」
「俺もです」
イルカの両手がカカシの尻を掴む。きつく締まる尻肉を左右に開かれ、ぞわりと肌が粟立った。
これまで誰にも触れることを許さなかったその場所へ、初めてイルカの舌が触れる。
ちろり、と暖かな舌先が触れ、知らず口元に笑みが浮かんだ。
「っ、あー、いいね……」
ちろちろ、ちろちろと遠慮がちに皺をなぞられる。
鼻息が会陰へ当たってくすぐったいが、腹に力を込めて耐えた。
しばらく周囲を舐めていた舌が、やがてつんつんと孔を突き始める。意識して力を緩めてやれば、舌先がぬくりと関門を突破した。
「ああ、いいよ、先生」
手を伸ばしてイルカの頭を撫でる。
ぷつりと髪紐をほどくと、結び癖のついた長い髪がはらはらと落ちて彼の表情を隠していった。
始め遠慮がちだった舌が、次第に大胆に動き始める。
ぬくぬくと出し入れしながら陰茎を擦られると、強い快感が波となって押し寄せてきた。
ここまでしてくれているのだから、もう出してしまおうか。
集中すれば射精できそうな気がしてイルカの手の上に己の手を重ねる。
滲み出た先走りをイルカの指に擦りつけながら上下していると、尻の孔からぬるりと舌が引き抜かれた。
のそりと顔を上げたイルカが、何かをやりきったかのような笑みを浮かべてカカシを見る。
「痛くなかったですか?」
「全っ然♡ すごく気持ちよかったよ、ありがとせんせ♡ オレもうイッちゃいそ♡」
「それはよかった。でも、まだ出しちゃだめです」
ふんふんと鼻を鳴らしたイルカによって、ずる、とやや乱暴に腰の下から枕が抜かれる。
~アナル舐め終わり~
ベッドに尻もちをついたカカシの上へ、イルカがよいしょとばかりに乗り上げてきた。
「イくのは俺の中にしてくださいね♡」
「は、はぁい♡」
にこりと微笑みながら言う恋人に呆けた笑みを返す。こんなに素晴らしいことがあって良いのだろうか。
もしかしたら本当に夢かもしれない。ここで目が覚めたら暴れ狂う自信がある。
早鳴る鼓動に鼻息を荒くするカカシに跨ったまま、イルカが左右に大きく足を開いた。
腰を前へ突き出し、レース地のビキニに透けた性器もその奥にある蕾も何もかも見せつける格好で、彼の片手がカカシの茎を握る。
「ん……カカシさん、見えます、か?」
「うん♡ うん♡ イルカの大切なところ、全部見えてるよ♡」
「ふふ♡ じゃあ、俺の中に入ってきてくださいね……♡」
黒いレースをずらし、露わになった蕾へぬちゅう、と亀頭が当たる。仕込んできたらしいローションでてらてらと光るそこに、己の逸物がぬちぬちと擦り付けられるのがひどく卑猥だ。
一気に押し入りたい衝動を堪えるあまり、己のこめかみに血管が浮いているのすら感じる。
イルカも興奮しているのだろう、蕾は大きく収縮し、まるで他の生き物のようでもあった。
「ふっ……んぅっ! あっ、あ……んんっ……!」
「うっ」
イルカが体重をかけ、ぐぬぅと先端が呑み込まれる。
咥内とは段違いの締め付けと熱さだ。散々焦らされた息子が暴発しそうになり、カカシは拳を握りしめた。
その拍子にびきりと股間がまた力を漲らせたのが分かる。イルカにも伝わったようで、「あんっ」と声を上げてカカシに悩まし気な視線を送ってきた。
「もう、こんな大きくしちゃって、入らないですよ」
「だいじょーぶ♡ がんばれ♡ 先生♡」
「んもう……んっ、う、んぅ……あ、はぁ……ッ!」
ず、ず、ず、と己の陰茎がイルカの肉輪を広げ、内部へ呑み込まれていく。明るい室内でその様子を目に焼き付けるカカシの額には興奮に比例して玉のような汗が浮いていた。上に乗っているイルカはいわずもがなだ。
「っ、は、いった、かな……?」
半分ほどを身の内に収めたところで、イルカがゆさゆさと腰を上下し始めた。
「んっ、んっ、あっ、んはぁっ、カ、カシ、さん、気持ち、いい?」
「うん♡ 最高だよ♡」
「よかったぁ……♡」
破廉恥な格好をした恋人があられもない姿で腰を振っているのだ。何の文句があるだろう。
男を受け入れるのに慣れた、褐色の窄まりがこれ以上にないほど広がり、みっちりと雄の陰茎を咥えこんでいる。
引き抜く際、陰茎を離すまいと肉が吸い付いてくるところなどいやらしすぎて目眩がする。
とはいえ、まだ半分しか迎え入れてもらっていないことも事実だ。あえて避けているのだろうが、イルカのもっと乱れたところも見てみたい。
ちょっとした悪戯心から、彼の動きに合わせて下からくいっと腰を突き上げてみる
「あんっ! ちょっと、だめです、よ! カカシさんは何もしなくて良いって、言ったでしょうっ」
「ごめーんね。でもイルカにばっかりしてもらうのも悪いじゃない♡」
軽い気持ちで言うと、イルカがふっと眉尻を下げた。
熱に浮かされたようだった潤んだ瞳が、カカシをじっと見下ろしてくる。
「いつも、里の皆に尽くしてばっかりなのはあなたでしょう? 火影様。こんな時くらい甘えて下さい」
「せんせぇ……」
ぐっと来た。オレの恋人は何て優しいんだろう。
感動でじぃんとしているカカシにふっと微笑んだかと思うと、イルカが仰け反っていた身体を起こし、前へぐいと倒れてくる。
がに股でカカシを咥え込んだまま前のめりになったイルカが、カカシの両手をそれぞれぎゅっと握った。
「尊敬しています。六代目。いつも私たちを導いて下さってありがとうございます」
「んっ、せ、せんせぇ」
言葉と共にきゅっ、きゅっと陰茎を締め付けられ、カカシの口から甘えた声が飛び出す。
「でも、今は俺だけのカカシさんですよ♡」
「……っ♡」
感動のあまり言葉も出ない。
あまりの愛らしさに震えていると、イルカがむう、と唇を尖らせた。
「俺だって、寂しかったんですからね」
「一人でしちゃうくらい?」
「内緒です」
言い終わると同時に額へむちゅうと吸い付かれ、思わず達しそうになる。
もう我慢ならんとイルカの腰を掴もうとするが、どうしても握った指を解いてもらえない。
「だめですよ、動いちゃ」
「だってぇ」
「今夜は全部俺に任せて、カカシさんはいい子にしててくださいね……んっ、ほら、動きます、よっ」
カカシと指を絡めあったまま、イルカが尻を上下に振りたくる。
先程までよりずっと深く刺さっていて苦しいだろうに、長いストロークでカカシの陰茎を根本から先端まで抜き差ししているのだ、堪らない。
「あっ♡ 気持ちいいよ♡ 先生♡ すごい♡」
「んっ、それ、は、よかっ、た……っ! あっ、あっ、ンッ、んふぅっ」
勃起した彼のものが窮屈そうで、ビキニをずらして股間を丸出しにしてやる。ぼろんとまろび出た陰茎が、イルカの動きに合わせてびたびたとカカシの腹を打った。
充血した先端からは白濁が飛び散り、結合部からはぐちゅぐちゅと粘っこい音がひっきりなしに聞こえてくる。
イルカの全身は赤く染まり、マイクロビキニは最早怪しい文様めいて肌の上でのたうつばかりだ。
いきんで歪んだ表情も、勢い余って漏れ出る空気の音も、何もかもが愛おしい。
半開きになった口から垂れ落ちてきた唾液を舌先で受け止めてやると、蕩けた表情でイルカが笑った。
「カカシさん、だぁいすき♡」
「オレもだよ、可愛いイルカ」
崩れるように倒れてきたイルカを受け止め、舌を絡ませ合う。口づけに夢中になっている間に指をそうっと解き、ついにカカシは目的の場所へ両手を落ち着かせた。
「んっ、んうぅっ」
途端にびくりと反応したイルカの舌をじゅるりと吸い上げ、指が食い込むほど掴んだ尻肉の合間を思い切り突き上げた。
「んんんっ!!」
イルカの目が見開かれる。
焦って起き上がろうとした彼が背を反らすのに合わせて、続けざまに陰茎を打ち付けてやった。
「おっ、あ、おっ、おっ、んおぉっ、ら、らめって、言ったのに……んひぃっ」
「ん♡ オレっていい子になれないみたい♡」
「そ、んなぁ♡ あっ♡ んもう♡ おっ♡ おんっ♡ だめ♡ いっちゃう♡ いっちまう♡」
イルカがわざと避けていたらしい弱い場所を狙って擦りつけていると、しばらくして彼の身体が波打つように跳ね、カカシにしがみついてきた。
「ん、ぐぅ……っ!」
ぶしゅう、と二人の間で生ぬるい液体が噴き上げる。
精を搾り取るようにうねる中の動きにつられ、カカシも少量をスキン越しに吐き出してしまった。
「せんせ、いっちゃった? すごいよ、中、うねうねして。オレもそろそろ限界かも♡」
息を荒げ何も言えずにいるイルカの肩口にちゅうちゅうと吸い付き、ここぞとばかりに跡を残す。気づいたら怒るかもしれないが、今夜は所有欲の主張が激しい。
「ね、せんせ、イルカ、動いていい? オレの白いの、出してもいい?」
耳元で囁くと、イルカがうぅんと低く唸るような声を出して、こくこくと頷いた。
小刻みに彼の身体が震え、きゅうきゅうと陰茎が締め付けられる。
イルカが自分の声に弱いと知ってから随分便利に使わせてもらっているが、ここまで顕著な反応を見せるのも珍しい。
それだけ彼も飢えていたのだと感じ、ますます愛しさが募る。
「せんせ、好きだよ。イルカ、愛してる。ね、好きって言って?」
「んぁっ、あっ、すき、すき、す……ンンっ! あっ、だめ、またいく、そこ、じんじんするぅっ」
肌のぶつかる音が響くほど打ち付け続けていると、イルカがますます強くしがみついてくる。
その重さと熱さにうっとりとしながら、カカシは頂上を目指して動きを加速させる。
「あっ、あっ、あんっ! いく、いくぅ……!」
「っ、オレも……っ」
溜まりに溜まった熱の塊が放出される。衝動に任せてイルカの尻肉を左右に割り、これ以上ないほど奥まで己を突き刺した。
射精しながら、彼の一番狭い場所に向かってぐりぐりと先端を擦り付ける。イルカは一瞬身体を硬直させたあと、くったりとカカシにしなだれかかってきた。
「ふーっ、すっご、気持ちぃ……あれ、せんせ、だいじょうぶ?」
耳朶に口づけながら背中を撫でると、意識を失ったらしい身体がぶるりと震えた。じわあ、と腹が温かいもので濡れるのを感じる。
「おしっこ出ちゃったの? かわいい。イルカ、いい子だね」
閉じた瞼にちゅ、ちゅ、と口づける。極まった際に彼が粗相するのは時折あることで、カカシは特にそれを好んでいた。何というか、生きている感じがする。
イルカの重みと温もりを散々味わったあと、力の抜けた身体からゆっくり己を引き抜く。体力的はまだまだ回数をこなせるが、心は充分満たされていた。
「これ、もらっちゃっても良いかねぇ」
イルカの肩からずり落ちていたレースの紐をぱちんと弾き、誰にとも無くつぶやく。
汚れたから処分したとでも言えば納得してくれるだろうか。
「ん……」
汗と体液にまみれた身体を寝かせてやり、卑猥な衣装を脱がせ終わったところでイルカが小さく声を発した。見咎められる前にささっとビキニを隅へ隠し、恋人の顔を覗き込む。
「悪いね、起こしちゃった?」
「え、あ……すみません、俺……」
「いーのいーの。寝ててよ。片付けておくから」
「でも」
起き上がろうとする彼を制し、隣へ寝そべる。一人用のベッドで身を寄せ、いじらしい恋人の頬を指の背で撫でた。
「今夜はありがと。嬉しかったよ。また頑張れそ」
本心からの言葉をかけたつもりが、イルカの顔に影が差す。
「俺、何もしなくて良いとか言っておいて、結局あなたの世話になっちまってるじゃないですか」
「いいじゃない、こっちがそれで良いって言ってるんだから」
「駄目なんです、それじゃあ」
「へえ、どうして?」
目を伏せたイルカの、長い髪に指を絡める。
思案げに瞳を泳がせる彼の中にある葛藤は、やすやす吐き出せるものではないらしい。
「いいのよ、先生。会いに来てくれたってだけでもう充分。オレは幸せ者ですよ」
「カカシさん……」
「それでも気が引けるっていうんなら、今度オレの言う事なんでも聞いてくれる? もっとやらしい格好させちゃうかもしれないけど」
「何言ってるんですか、もう……。でも、良いですよ。それであなたが喜んでくれるなら」
「本当っ!? 絶対だよ! 約束だからね!」
「か、顔が怖いですって」
肩を竦めたイルカが吹き出したのを合図に、二人で笑い合う。
花が咲くようなその笑顔があれば他には何もいらない。
きっかけはシカマルからの提案であれ、多忙なカカシのためを思って行動してくれたその気持ちが何より嬉しい。己のような人間がこんな幸せを与えられて良いものかと考えるほどには満たされているのだ。
「やっぱり、後始末は朝でいいか」
「ええ、そうしましょう」
薄い肌掛けをたぐり寄せ、裸のままで抱き合う。
鼻の上を走る傷跡を唇で辿り、細く、長い息を吐いた。
終
若い頃と変わらずふさふさと生い茂る銀髪の上へ、ひらりと書類が舞い落ちる。嗅ぎ慣れた、墨の匂いが鼻をついた。
「あー…………」
「ちょっと、しっかりしてくださいよ六代目。まだ宵の口っすよ」
「明るいうちに帰れる生活がしたいのよオレは……」
「無理言わねーでください。はい、これ残りの稟議書。これが済んだらとりあえず今日の分は終わりです」
「そう……って何よこの量」
うず高く積みあがる書類の山に愕然とする。
ただ判子を押せば良いというわけではないのだ。内容を吟味し、差し戻す場合もある。
これでも何割かはシカマルに委任しているというのに、ちっとも仕事が減った気がしない。
「しょうがねぇっすよ。大なり小なり開発の申請が引っ切り無しに舞い込んでくんですから。明日も同じくらい届く予定っすから、お願いしますよ」
「嘘でしょ……」
もう何もやる気がしない。こんなことなら任務を詰め込まれた方がマシだ。
うなだれるカカシの前で、かつての教え子と同期である青年が気遣わしげな声を発した。
「あのー、やっぱ俺明日出てきましょうか」
「だーめ。明日はお前は休みって決めたでしょ。いーから奥さんと一緒にいてやんなさい」
「でも六代目一人に任せられる量じゃ……」
「何とかするって。ちょっとごねてみただけだからさ。ほら、今日ももう帰りな。きっと美味いもん作って待ってくれてんでしょ」
「……うっす」
身重の伴侶が待つシカマルが、少し照れくさそうに唇を尖らせる。
髭を生やして一丁前に見える奴が青臭さを覗かせる貴重な瞬間だ。
カカシに促され扉へと向かったシカマルが、くるりとこちらを振り返った。
「六代目、仮眠室に俺からのプレゼント用意してありますんで、何にせよそれ早く片付けた方が良いっすよ」
「何、プレゼントって」
「すっげー良いモンです。期待してください」
「その笑顔が怪しいんだけど」
くくく、と肩を揺らすシカマルに、かつての仲間の姿が重なる。
カカシが郷愁に浸っているとも知らず、側近はあっさりと執務室を後にした。
「プレゼントねぇ……ま、とっととやっちゃいますか」
今は何より睡眠時間がプレゼントなんだけど、と思いながらも、カカシは紙へ手を伸ばすのだった。
「っあー……」
首を擦りながら廊下を歩く。
執務室の隣はカカシの仮眠室となっていた。執務室より二回りほど狭いその場所は、なかなか自宅へ帰れないカカシにとって今や第二の自宅のようなものだ。
本当はもっと帰りたい場所があるのだけれど、六火を背負っている以上、我儘は言えない。
念のために仮眠室の扉の前で解の印を結んでみるが、何の反応もなかった。
いたずらの類では無さそうだと確信できただけでも良しとする。
今はカカシの補佐役を担ってくれているとはいえ、シカマルも元々同僚の教え子だった人間だ。カカシの元で任務についたこともある。加えてあのナルトの同期であるからして、いたずら心が無いとも限らない。
とにかく寝られたらそれで良い。
静かにノブを回し、あくびを噛み殺しながら一歩踏み入れたカカシは、そのままの格好でしばらく動けなくなった。
ドアを背にした小さなソファに、見慣れたひっつめ髪がぴょこんと揺れていたのだ。
「えっ……」
声が出たのは、それを見てたっぷり十秒もしてからだろうか。
急いでドアを閉め、鍵をかける。この部屋には暗部の立ち入りも禁止しているが、その分出入りは厳しく監視されているはずだ。
ということは、彼――うみのイルカがこの部屋にいることはカカシ以外、周囲の皆が知っていたことになる。
なによ。言ってくれたらもっと早く終わらせたのに、いや、仕事を投げうってここへ直行したのに。
だから誰も言ってくれなかったのだと同時に理解しつつ、カカシはごくりと喉を鳴らしながら一歩、ソファへ近づいた。
「イ、 イルカせんせ?」
声をかけると、見慣れたベストがびくりと揺れた。
そう、見慣れているはずなのだ。なのに、何かが違う。
木の葉の里では忍びすべてに忍服が支給される。額当ては当然として、ベスト、黒の上下、メッシュインナー。脚絆にサンダルまで。イルカなどは教師という職業柄、常にお手本のようにきっちりと着用している。
なのに、なのにだ。
まず、ひとつに結ばれた黒髪の影にいつもは見える額当ての結び目が無い。これはオッケーだ。額当てを外すなんてプライベートモードなのね、先生。
問題はその次だ。
首と腕が見えちゃってるんですけど。
剥き出しの、生身の、健康的な素肌が見えちゃってるんですけど。
しかも何か、首にひらひらしたものがあるんだけど?
ねえ、先生、どういうこと!?
「カカシさん、大きな声出さないで下さい」
「えっ、聞こえてた?」
「聞こえてたも何も、額当てがどうだこうだってずっと喋ってたじゃないですか」
なんてことだ。心の声はすっかり漏れていたらしい。
カカシは咳払いをすると、こちらへ背中を向けたままのイルカに向かって一歩ずつ、ゆっくりと近づいた。
近づくにつれ、心拍が上がっていく。
狭い部屋だ。三歩も歩けばイルカの座るソファに膝が当たる。
「せ、先生」
「はい」
「これは、どういうことなのか、説明してくれるかな」
口布の中、ふうふうと己の呼気がうるさい。
カカシはイルカの真後ろで仁王立ちしたまま、眼下の恋人をじっとりと見下ろした。
首と腕だけではない。揃えた両脚までもが丸見えじゃあないか。
俯くイルカのうなじは、事の最中がごとく赤く染まっている。
恥ずかしいのか、もじ、と両膝をすり合わせるイルカの後ろで、カカシの息子は天を向いていた。
そりゃそうだろう。無理だ。こんなもの、視界の暴力だ。
「あっ」
つ、とうなじに指先を当てれば、イルカが小さく声を上げた。
いつもより少し甲高いそれに、彼の緊張と期待を感じてますます鼻息が荒くなる。
ベストの中に押し込んでいるらしい、ひらひらとしたものが覗いているのが気になって仕方がない。
「ねえ、せんせ」
「ん、ふ……へ、変な触り方、やめてください」
「変なって、こんな?」
「あっ、やだっ」
つつつ、とうなじとベストの合間に指を差し入れれば、イルカがびくびくと肩を震わせた。感度、オール5。ごーかっく♡
イルカが聞けば張り倒されそうな台詞を心の中でのたまいながら、カカシはひらひらとしたものの正体を探る。どうやらこれは、何かの紐だ。
あらぬ期待に息子がびきびきと力を貯める。ますます荒くなる鼻息に、カカシは意識して呼吸を整えなければならなかった。
ベストの中は蒸れて、肌に汗が滲んでいた。空調は適切に効いているはずなので、彼がそれだけ興奮しているのだろう。
カカシは無意識に上がる口角をそのままに、ベストと肌の隙間から指を引き抜いた。
そのまま鼻先に運び、すうう、と匂いを嗅ぐ。甘酸っぱい、恋人の香りが鼻孔を満たした。
「変なことしてるでしょう」
カカシの性癖を知り尽くしたイルカが、俯いたままで呆れたような声を発した。
「してないよ」
「禍々しいチャクラを感じますが」
「オレがイルカ先生に変なことしたことあった?」
「あるじゃないですか」
「例えば?」
カカシの投げた問いには答えず、イルカが小さく頭を振った。
もっと追い詰めても良いが、今はとにかく全貌が見たい。
逸る気持ちを抑えて髪紐に指をひっかける。解こうか少し悩んで、今日はそのままにすることとした。
長い髪を乱して悶える姿も好きだが、結んだまま身をよじる様はより禁欲的で素晴らしい。
カカシは意を決してイルカの前方へ移動した。歩いたのではない。瞬身を用いた。
気付いたイルカが「は?」と言いながら呆れた顔で見上げてきたが、構いやしない。
なにせもう、股間がテントを突き破る寸前だ。
正面から見たイルカはほぼ全裸といって良かった。
裸にベストだ。
正直、彼と恋人になってから裸エプロンをしてもらったことはあった。今もありありと思い出せる至上の夜だ。
だが、今夜はあの夜を上回るかもしれない。
忍びならば一度は夢見たことのある、裸ベスト。なんて良い響きだろう。
その、童貞諸君が言葉だけで射精しそうな状態で、今、目の前に恋人が鎮座している。
「夢なのかな」
「夢じゃないですよ」
「本当に? 触ったら消えたりしない?」
「何の話してるんですか。もう、あなたって人は……」
言いながらイルカが膝の上に両手を乗せる。
年相応に毛の生えた、張りのある腿の上に乗せられた、血管の浮いたごつごつとした手の甲。
「はーっ」
「な、何ですか」
「逆に冷静になりましたよ。人間興奮しすぎると冷静になるものですよ、アカデミーで習いませんでしたか」
「あなたアカデミー通っていないでしょう。もう……そんな状態で言う言葉ですか」
カカシの股間をちら、と見てイルカが言う。
恋人の勃起した逸物など見慣れているだろうに、気まずそうに目元を赤くしているのが愛らしい。ノッてきたらあんなに淫らになるくせ、いつまで経っても昼は淑女のようだ。今は真夜中だが。
「イルカ先生、オレの情緒をかき乱すのはいい加減にして下さい。さ、全貌を見せてもらいましょうか」
「おっ立てといてふんぞり返らないで下さい」
「いいから、お願い! ねえ、見せて!」
がばりと跪いて膝に縋る。
彼の両手を握ってすりすりと頬を寄せれば、イルカがぎょっとしたように身を強張らせ、続いて可哀想なものでも見るかのように眉尻を下げた。
「カカシさん、お疲れなんですね……分かっちゃあいましたけど」
「そうなの! オレったらもう一ヶ月も先生んちに行けてないのよ!? エッチも2週間前におしゃぶりしてもらったきりだし、もう限界なの!!」
ちゅ、ちゅ、とイルカの両手へ口づける。そのまま膝頭にも唇を落とし、ぴちりと閉じた膝の間へ無理やり鼻先を押し込んですううと息を吸い込んだ。
イルカの体臭をベースとして、少しの汗と、真新しい下着の匂い。瓶詰めにしてコレクションしたいくらいだ。
「ちょ、ちょっと!」
頭をぐいぐいと押しやられ、顔を上げた先で真っ赤な頬のイルカと目が合う。
意思の強い瞳が、今は恥じらいに濡れていた。
ああ、オレの恋人はなんて素敵なんだろう。
「もう、わかりましたから……少し、離れて下さい」
言われた通り顔を上げ、イルカの前で正座する。
しかたがないな、と聞き分けのない生徒を見るような目つきで、イルカがこちらを見下ろした。
そして、期待に震えるカカシの前でベストのフロントに手をやり、上から下へジジ、とジッパーを下げていった。脱いだベストをソファの背にかけ、カカシの前にその全体像があらわになる。
待ち望んだその素肌――いや、素肌の上を走る黒い紐めいたものに、カカシの視線は釘付けとなった。
「なっ――」
紐、と思ったものはレースだった。複雑な模様の連なった細いレースがイルカの首から胸元にかけて伸びている。
そして行き着く先の胸元では、あろうことかカカシが大事に育ててきたふっくら乳輪を、花びらを模した白いレースが覆っているではないか。
あまつさえ花びらの中央にはスリットが入っているようで、その合間から愛らしい突起がそっとこちらを覗いている。
白い花びらの合間から見える茶褐色の乳頭。カカシが長い時間をかけて舐めて弄って敏感に育てた、唯一無二の宝石だ。
視線を下げてみれば、鍛えられ線の入った腹筋や、イルカの性感帯のひとつでもある形の良いへそは剥き出しで、黒々と茂った陰毛が見えたかと思うとその下はまた、例のレース紐に繋がった極小面積の布地が彼の逸物をうやうやしく包み込んでいた。
言葉を失うというのは、このことだろうか。
数多の戦線を経験してきたカカシだが、このレベルの緊張感に包まれることはそうそう無い。
口布の下、わなわなと震える唇を片手で抑える。そうでもしないと叫びだしてしまいそうだ。
「……な、なに、その……」
「シカマルが、あなたがお疲れだから癒してやれって……」
「じゃなくて、何なの、その破廉恥極まりないエロいマイクロビキニは!」
「マイクロビキニってご自分で仰ってるじゃないですか」
「そ、そんな、破廉恥な格好……! 一体どこで手に入れたの!」
「通信販売で買いました」
「そんな、エッチなことして……」
「通信販売は別にやらしくも何でもないでしょうが。……でもやっぱり、みっともないですよね。同僚に相談したら、コスプレするのが一番だって聞いたんですけど……着替えてきます!」
カカシを振り落としてイルカが立ち上がる。今にも駆け出そうとするその足に、カカシは必死にしがみついた。
「ちょ、ちょっと待って! そのままでいい、そのままでいて! お願い!!」
「離して下さい! 俺どうかしてたんです!!」
「だめ、待って、お願い先生!」
「わっ」
ドロンと現れたカカシの影分身が、イルカを背後から拘束する。両脇を下から持ち上げるようにして抑え込まれ、イルカがじたばたと足を動かす。が、片方にはカカシがしがみついているので身動きは取れない。
「先生、落ち着いて!」
「あなたがそれを言いますか! いいから離して下さい! 生き恥を晒したくないー!」
「どこが恥なの? 可愛いじゃない」
「「へ?」」
カカシとイルカの声が重なる。
二人して見上げたのはカカシの出した影分身だった。
上忍服を着て、背後からイルカの身体を覗き込んでいる。
「すごくエッチな格好だね、イルカ先生。嬉しいなぁ。オレのために着てくれたんでしょ?」
「は、はい……」
「いいじゃない。もっと見せてよ。ベッド行こうか」
「はい……♡」
「ちょっ、ちょっとちょっと! それオレの台詞でしょ!? 何影分身が出張ってるのよ!」
一瞬でとろんとした目つきになったイルカを抱き寄せる。影分身も離さないものだから、イルカを挟んで間近で睨みつけてやった。
「お前がモタモタしてるからでしょ。いいじゃないの、いつも良い思いしてるんだから、たまにはオレに譲りなよ」
「いつもっていつよ!? もう一ヶ月も先生とイチャイチャしてないのはオレも同じなんだけど!」
「じゃあ三人でする?」
「うーん、それなら、まぁ……って痛っ!」
思わず納得しかけたカカシの腿に、強烈なキックが入った。イルカだ。
「俺を置いて勝手なこと言わないで下さい! 三人は駄目です!」
「先生、前3Pした時おもらししちゃったの、まだ気にしてるの?」
「次は金的しますよ」
「ごめんなさい」
「ってわけだから、お前はだーめ」
「イルカ先生が言うなら仕方ないかな。じゃあね、せんせ。今度はオレとしよーね」
「んむっ」
影分身がむちゅうとイルカの唇を塞ぐ。じゅっぽじゅっぽといやらしい音を立てながらイルカの腔内をなぶり、ちゅっぽんと音を立てて唇が離れていく様を本体であるカカシは唇を噛んで見逃してやった。この程度、あとでいくらでも取り返してやる。
「もーいいでしょ。消えな」
「はいはい」
現れたときと同じように一瞬で影分身が姿を消す。
拘束を解かれ、口づけの余韻でふらつくイルカを今度こそ正面からぎゅうぎゅうと抱きしめて、カカシはその濡れた唇にむしゃぶりついた。
「んっ、ん、うんっ」
もう、先生、悪い子なんだから! 同じ顔だからってすぐにメロメロになっちゃって!
心のなかで詰りつつ、他の男に舐め回された腔内を自分色に染め直す。
ミントの香りが鼻孔をくすぐり、カカシは口づけたまま目を細めた。
行為の前、いつもイルカは歯を磨く。もちろんそんな余裕が無いときの方が多いが、カカシの来訪が分かっているとき、イルカからこちらを訪ねてきてくれるとき、彼からはほのかなミントと石鹸の香りがするのだ。
準備してきたと言外に伝わるその香りを嗅ぐだけで興奮するのは当然だろう。
肉厚の舌を絡め取り、根本から先端へと扱いてやる。途中で上顎をくすぐれば、腕の中でイルカの身体がびくびくと跳ねた。
手のひらに伝わる体温が熱い。
うっすらと滲む汗。背中を撫で回す手に引っかかる紐――
そうだった!
「ぷはっ」
カカシはイルカから顔を離し、一歩下がって彼の全身を見た。
頭の先から、つま先までを舐めるように。
影分身とカカシに挟まれたせいか、胸を覆っていた極小の花びらがずれている。艶のある、茶褐色の乳輪が半分ほどその姿を見せていた。
カカシの視線に気づいてか、イルカが慌ててそれを元の位置へ修正するが、今度は反対側がずれて、ぷくりとした乳頭がこぼれ出てしまう。
イルカは顔を赤くしながらそちらにも指先で花びらを被せ、慎重にその位置を確認していた。
一部始終をじっと見つめていたカカシを、イルカがちら、と見上げた。
唇を引き結び、噛み、それからひと舐めして、胸と股間を両手で覆う。寄せられた胸筋が、むにりと膨らんでその柔らかさを強調していた
「や、やっぱり、俺――」
「隠さないで、せんせ」
口から出た声音は、己でもわかるほど甘く、いやらしいものだった。
「よく見せて。背筋伸ばして、ほら」
躊躇いがちに降ろされた手。丸まった背がぐんと伸びると、花びらに包まれた胸元が突き出された。
浅黒い肌を走る、黒のレース。そこだけ白く浮かんだ花びらがひどく卑猥だ。
イルカの心拍が早い。緊張と興奮を表すように薄く上下する腹の下、レースの向こうにイルカの立派な逸物が透けていた。
触られてもいないのに、それは次第に形を変えてくる。頭をもたげ、伸縮性の無いレースの中で窮屈そうに何かを主張してくる。
「悔しいけど、あいつの言う通りだよ。本当に可愛い、イルカ先生」
「あっ……」
人差し指と中指で、胸のレースに触れる。ひらりと花びらを捲っただけで、イルカが小さく声を上げた。
角ばった彼の手がぎゅうと握られているのを横目に見る。
「ね、せんせ。ベッド行こ? もっと先生のこと可愛がらせて」
しっかりとした顎を撫でる。そのまま耳元へ指を滑らせれば、イルカがくすぐったそうに肩を竦めた。そしてカカシの手を取り――
「駄目です」
「へっ?」
今日何度目かわからない間抜けな声が出た。
「だ、だって、オレのために着てくれたんでしょ? だったら」
「違うんです」
きっぱりと言い渡され、今度はカカシが背中を丸める番だった。
駄目。違う。
最愛の恋人に拒絶され、こんな悲しいことがあるだろうか。あんな格好をしておいて。キスまでさせてくれたのに。
しおしおと萎れる心に反して、己の息子だけはまだ元気に勃ち上がっているのがいっそ惨めだ。
ごめんな、今夜のエッチはお預けだ。あとでシコッてやるからな。
心の中で息子に詫びつつ肩を落とすカカシの手が、ふいにきゅっと握られた。
指の間にイルカの指が差し入れられ、優しい暖かさに包まれる。
「カカシさん、勘違いしてるでしょう」
照れたような、困ったような表情でイルカがカカシを覗き込んでいる。ぽてっとした唇を尖らせ、黒い瞳に少しの笑みが浮かんでいる。
「違うんですよ。言ったでしょう? シカマルに頼まれて来たって」
首を傾げるカカシに、今度はにこりとイルカが笑いかけてきた。
「あなたちょっと働きすぎなんですよ。今日は俺が全部しますから、カカシさんは何もしなくて良いんです。いいですか。わかった?」
「わ、わかった」
「ん、よし」
教師然とした言葉に思わず呆けた返事をすれば、生徒にするように頭を優しく撫でられる。
かぁっこいい……。
素直にそう思って、カカシは改めて目の前の恋人に惚れ直した。
「じゃ、行きましょ」
「きゃっ」
よいせと横抱きに持ち上げられ、カカシの中の内なる乙女がのたうち回る。
こんなに可愛くて格好良くてエッチだなんて、オレの恋人ってやっぱり最高だよね。
先程までの落ち込みが嘘のように満面の笑みでイルカを見上げれば、ちゅ、と額に唇が落ちてきた。
「いっぱい気持ちいいことしてあげますからね」
「せ、せんせぇ……♡」
自分の目がハートマークになっている自信がある。カカシは思わずイルカに抱きつき、首の後ろにあるビキニの結び目を解いてやりたい衝動を必死に堪えなければならなかった。
「カカシさん♡ 気持ちいいですか♡」
「気持ち良すぎて溶けそうだよぉ……」
「ふふ♡ それは良かった♡」
天国。
第四次忍界大戦を経て、死後の世界への憧憬など微塵も無くなったカカシだが、今は「ここを天国とする」と宣言したくなるほどの、至高の心地にあった。
ベッドの上、イルカの膝枕に頭を預け、仰向けに全裸を晒している。
その股間ではいきり立つ逸物が、ローションまみれのイルカの手によってにちゅにちゅと扱かれていた。
浮き出た血管をなぞり、雁首との段差をすりすり♡と撫でられる。
焦らすような刺激にいっそイルカの手を掴んで無理やり扱きたくなるが、ここは我慢のしどころだ。
なぜなら、カカシの頭上には絶景が広がっている。
レースのマイクロビキニに身を包んだ、いや、ほとんど包めていないのだが、そのエッチな衣装をまとったイルカの胸がすぐ目の前にあるのだ。
よく鍛えられた、たわわな胸筋。
張りのある膨らみの、その端で、花びらを模した白いレースに包まれたカカシの大事な宝石がイルカの動きに合わせてちら♡ちら♡と時折顔を覗かせる。
よくよく見れば乳輪の下の方がはみ出しており、白と茶褐色のコントラストに視線が釘付けだ。
「絶景かな……」
「もう、それ言うの何度目ですか」
「だって本当なんだもの」
花びらめがけてふーっと息を吹きかけると、白いレースがひらひらと揺れた。
「あっ、もうっ。いたずらなカカシさんはこうですっ♡」
「んぶっ」
なんということだろう。
イルカのおっぱいが振ってきた。
唇の、ちょうど合間にぷくりと柔らかな、それでいて弾力のある粒が押し当てられる。
花びらのスリットから覗いていたカカシの宝石こと、イルカの乳首だ。
「ほーらほら、おっぱいですよ~♡」
ぐりぐりと強く押し付けてくるのは照れ隠しだろうか。
ボリュームのあるレースが口の周りをざりざりと刺激する。普通だったら結構痛いだろう。だが、今は普通ではない。非常事態だ。
カカシは己のこめかみにびきりと血管が浮くのを感じた。股間はいわずもがなだ。
身体の奥底から力が漲ってくる。今なら巷で流行のかめはめ波とやらも打てるかもしれない。
「えいえい♡ えっ、あ!? やっ、だめっ……!」
舌先でスリットの割れ目をちろちろと舐める。
突然の反撃にイルカが身体を退こうとするが、そうはさせない。手を伸ばし、首の後ろを押さえつけてやれば、イルカがぎくりと身を強張らせた。
「あっ、あっ、だ、だめですって、カカシさんは何もしちゃ駄目なのにぃ」
「れ、ろまっれるろ(手、止まってるよ)」
「そこで喋っちゃだめっ」
この状態で手出しせずというのは無理な話だろう。
カカシは健気にその存在を主張する肉芽を舌先でつんつんと突き、スリットのあわいをほじくるようにして柔らかな乳輪をれろりと舐めた。
汗で蒸れたのか、舌先に塩気が伝わる。旨味成分だ。そういえば夕食がまだだったと思うといっそう漲り、乳輪のみならず周りの皮膚までもべろべろと舐め回してやった。
「んっ、あっ、ちょっと、あんっ」
完全に手の止まったイルカを促すように腰を揺すれば、観念したかのようにおずおずと彼の手が動き出す。
にちゅにちゅと緩く竿を上下しながら、先端をくるくると撫で回され、ぞくぞくと快感が湧き起こった。
ああ、早くこれを突っ込んでやりたい!
胸の内で叫びつつ、カカシはイルカの乳頭へじゅうっと強く吸い付いた。
「ああんっ」
可愛く鳴く恋人の、もう片方の胸へも手を伸ばす。
「あっ」
スリットをかき分け、指先ですりりと先端を撫でてやると、イルカの脈拍が一段と早くなった。
カカシとの愛の日々により小指の先ほどの大きさに育った乳首を、舌と指でくりくりと転がす。時折摘んだり、吸い付いたり、緩急つけて弄ってやればイルカからむわりと青い匂いが漂ってきた。
イルカは濡れやすい。きっと、ビキニにいやらしい染みを作っているのだろう。
「せんせ、気持ちよくなっちゃった?」
乳頭に唇を触れさせたまま問えば、イルカが濡れた目で見下ろしてくる。
薄く開いた唇の端に透明な溜まりを見つけ、カカシは小さく微笑んだ。
リードしてくれるのも嬉しいが、やはりイルカは可愛がられているのが一番似合う。
このまま蕩けてくれるようなら押し倒してしまおうと算段していると、イルカが零れる寸前で唾液をじゅるりと吸い上げた。
「ンもうっ、カカシさんってば」
いけません、とのたまったイルカが、カカシの鼻をきゅっと摘んで上半身を起こしてしまう。
「だめなの? 気持ちよさそうだったのに」
「俺が気持ちよくなってちゃ駄目なんですって」
「いいじゃない、イルカ先生が気持ちいいとオレも嬉しいよ」
「だぁめ。ほら、頭下ろしますよ」
膝枕まで強制終了だ。
ちぇ、と唇を尖らせるカカシを視線でいなし、イルカがカカシの下半身へ移動した。
「失礼しますね」
ぱかりとカカシの膝を左右に割り、その間にイルカが正座をしてちょこんと収まる。
少し恥じらいながら上目にこちらを見る様はさながら少女のようにあどけない。今夜の格好は娼婦もかくや、といったところだが、イルカの清純性は三十歳を超えた今となっても減りも衰えもしなかった。
鼻息が荒くなる。興奮を隠そうともせず、カカシはにやりと口の端を上げた。
「せんせ、何してくれるの?」
「いいから、カカシさんはそこで見ててください」
片手で身体を支えたイルカが、もう片方の手でカカシの陰茎を握った。そうして、胸の花びらへちょん、とそれを押し当てる。
はぁ、と思わず吐息が漏れた。
今しがた散々唇で弄ってやった胸の粒が、今度はカカシの陰茎に口づけをしている。
ちゅ、ちゅ、と花びらの合間から覗く乳頭が、亀頭に触れるたびにぐにぃと潰れ、たわみ、ますます赤く色づいていく。
イルカの鼻からも「ん、ん」と甘ったるい音が聞こえてきて、カカシはこの部屋にカメラを仕込んでおかなかったことを激しく後悔した。
後にも先にもこんな刺激的なプレイは無いかもしれない。いや、頼み込めば実現するかもしれないが、初めて自らこんな破廉恥なことをして恥じらっているイルカの姿は今しか見られないのだから。
静かに悔やんでいるカカシに向かって、イルカが照れくさそうに笑いかけた。
「カカシさん、見えますか? 俺のおっぱいとカカシさんの……ち、ちんぽが、キスしてるとこ」
「う、うん♡ 見えるよ♡ 気持ちいいよ♡」
普段あまり口にしてくれない下品な言葉に満面の笑みで返すと、イルカが心底ほっとしたように「良かったぁ」と笑った。
付き合い始めた当初は触れ合うだけでも終始顔を隠したり、いざ繋がろうとしても体位はバックしか許してもらえなかったり、と苦労したことを思い出す。当時ほどの拒否は無くなったが、今も基本的には恥ずかしがり屋のイルカだ。
なのに、こんな破廉恥な格好をしてカカシに尽くしてくれているのだから、惚れ直さない方がおかしな話である。
カカシは性的な興奮をしのぐ幸福感に包まれ、一人うんうんと頷いた。
花びらのレースに亀頭が擦れて少し痛いことなんて、どうでも良いのだ。
陰茎の根本をくちくちと緩く上下されながら、先端へはくにくにと優しく、時折ずりずりと強い刺激が与えられる。
その様子をつぶさに観察しながら、もどかしい快感についつい腰を浮かせてしまう。
「こぉら、カカシさん、動いちゃだめですよ」
「だってぇ……」
「仕方がない人ですねぇ。じゃあ今度はこっちでキスしましょうね♡」
「あっ♡」
ぶちゅう、とイルカの唇が亀頭へ吸い付く。
敏感な丸みをれろりと舐め回されたかと思うとすぐさま暖かくぬるぬるとした腔内に迎え入れられ、カカシは待ち望んだ刺激にほう、と息を吐いた。
肉厚の舌が竿に絡みつき、頬の内側の温かい肉がきゅう、と締め付けてくる。
ぐぽぐぽと下品なほどの音を立てながら頭を上下するイルカの、結んだままの髪がぴょこぴょこと揺れた。
少し狭い額に、青年らしく黒々と太い眉、その下で伏せられた瞼は、薄く色づいていた。
昼間、子どもたちの前できらきらと輝く瞳が今、情欲に濡れている。
眺めるほどに愛しさが募り、カカシは彼のこめかみをそっと撫でた。
何もかも初めての身体を拓いたのは自分だ。
カカシしか知らない身体が、カカシを想って欲に濡れている。
このままどっかに閉じ込めちゃおうかな。
今まで何度と無く浮かんだ考えが頭をよぎり、カカシは溜まった唾液とともにそれを飲み込んだ。
「せんせーって本当、罪作りだよねぇ……」
「ふぁにふぁれふは?(何がですか?)」
「っあー! そこで喋んないで! ごめん! ごめんなさい!」
「ふふ、さっきのお返しです♡」
いたずらっぽく微笑むイルカに白旗を上げる。
イルカはカカシの鈴口をちろちろと舐めると、裏筋を辿って根本にぶらさがるものへと顔を埋めていった。
ふにゅう、と双球の間に鼻を埋め、すう、と匂いを嗅いでいる気配がある。
くすぐったさに「はは」と声を上げると、続けて片方の球がねっとりとした咥内へ含まれた。舌で転がされ、くるくると舐め回され、じれったいようなむずむずとした快感が広がる。
「っ、はぁ、気持ちいいよ、せんせ」
引っ詰め髪をそっと撫でる。生え際を親指でなぞると、ぴくりと肩が揺れた。広い肩幅は間違いなく男のそれで、盛り上がった筋肉や肌の浅黒さは理想的な男らしさといってもいいだろう。
そんな、男性的魅力に溢れた彼が一心不乱に己の股ぐらにしゃぶりついているのが堪らない。
Tバックという、ほとんど何も守っていない黒い紐をまとった尻が左右にふり♡ふり♡と揺れていることに、イルカは気づいているだろうか。
~ここから受けによる攻めのアナル舐め~
れろれろと交互に球を舐めながら、空いた手で竿をぬちぬちと擦られる。
緩慢な刺激に焦れてきた頃、徐ろに顔を上げたイルカがぐい、とカカシの腰を浮かせ、その下に枕を挟んだ。
おっ、と眉を上げる。
カカシの視線に気づいてか、イルカがちらりとこちらを見てはにかんだ。
「いいの? オレ、昨日も風呂入れてないよ」
「いいんです。カカシさんにもっと、気持ちよくなってほしいから」
「そう、じゃあお願いね」
イルカの前でぱかりと股を開く。
彼の唾液で濡れた股間、いやらしい匂いを放っているだろう性器の、更に奥へイルカが顔を埋める。
「せんせ、大好き」
「俺もです」
イルカの両手がカカシの尻を掴む。きつく締まる尻肉を左右に開かれ、ぞわりと肌が粟立った。
これまで誰にも触れることを許さなかったその場所へ、初めてイルカの舌が触れる。
ちろり、と暖かな舌先が触れ、知らず口元に笑みが浮かんだ。
「っ、あー、いいね……」
ちろちろ、ちろちろと遠慮がちに皺をなぞられる。
鼻息が会陰へ当たってくすぐったいが、腹に力を込めて耐えた。
しばらく周囲を舐めていた舌が、やがてつんつんと孔を突き始める。意識して力を緩めてやれば、舌先がぬくりと関門を突破した。
「ああ、いいよ、先生」
手を伸ばしてイルカの頭を撫でる。
ぷつりと髪紐をほどくと、結び癖のついた長い髪がはらはらと落ちて彼の表情を隠していった。
始め遠慮がちだった舌が、次第に大胆に動き始める。
ぬくぬくと出し入れしながら陰茎を擦られると、強い快感が波となって押し寄せてきた。
ここまでしてくれているのだから、もう出してしまおうか。
集中すれば射精できそうな気がしてイルカの手の上に己の手を重ねる。
滲み出た先走りをイルカの指に擦りつけながら上下していると、尻の孔からぬるりと舌が引き抜かれた。
のそりと顔を上げたイルカが、何かをやりきったかのような笑みを浮かべてカカシを見る。
「痛くなかったですか?」
「全っ然♡ すごく気持ちよかったよ、ありがとせんせ♡ オレもうイッちゃいそ♡」
「それはよかった。でも、まだ出しちゃだめです」
ふんふんと鼻を鳴らしたイルカによって、ずる、とやや乱暴に腰の下から枕が抜かれる。
~アナル舐め終わり~
ベッドに尻もちをついたカカシの上へ、イルカがよいしょとばかりに乗り上げてきた。
「イくのは俺の中にしてくださいね♡」
「は、はぁい♡」
にこりと微笑みながら言う恋人に呆けた笑みを返す。こんなに素晴らしいことがあって良いのだろうか。
もしかしたら本当に夢かもしれない。ここで目が覚めたら暴れ狂う自信がある。
早鳴る鼓動に鼻息を荒くするカカシに跨ったまま、イルカが左右に大きく足を開いた。
腰を前へ突き出し、レース地のビキニに透けた性器もその奥にある蕾も何もかも見せつける格好で、彼の片手がカカシの茎を握る。
「ん……カカシさん、見えます、か?」
「うん♡ うん♡ イルカの大切なところ、全部見えてるよ♡」
「ふふ♡ じゃあ、俺の中に入ってきてくださいね……♡」
黒いレースをずらし、露わになった蕾へぬちゅう、と亀頭が当たる。仕込んできたらしいローションでてらてらと光るそこに、己の逸物がぬちぬちと擦り付けられるのがひどく卑猥だ。
一気に押し入りたい衝動を堪えるあまり、己のこめかみに血管が浮いているのすら感じる。
イルカも興奮しているのだろう、蕾は大きく収縮し、まるで他の生き物のようでもあった。
「ふっ……んぅっ! あっ、あ……んんっ……!」
「うっ」
イルカが体重をかけ、ぐぬぅと先端が呑み込まれる。
咥内とは段違いの締め付けと熱さだ。散々焦らされた息子が暴発しそうになり、カカシは拳を握りしめた。
その拍子にびきりと股間がまた力を漲らせたのが分かる。イルカにも伝わったようで、「あんっ」と声を上げてカカシに悩まし気な視線を送ってきた。
「もう、こんな大きくしちゃって、入らないですよ」
「だいじょーぶ♡ がんばれ♡ 先生♡」
「んもう……んっ、う、んぅ……あ、はぁ……ッ!」
ず、ず、ず、と己の陰茎がイルカの肉輪を広げ、内部へ呑み込まれていく。明るい室内でその様子を目に焼き付けるカカシの額には興奮に比例して玉のような汗が浮いていた。上に乗っているイルカはいわずもがなだ。
「っ、は、いった、かな……?」
半分ほどを身の内に収めたところで、イルカがゆさゆさと腰を上下し始めた。
「んっ、んっ、あっ、んはぁっ、カ、カシ、さん、気持ち、いい?」
「うん♡ 最高だよ♡」
「よかったぁ……♡」
破廉恥な格好をした恋人があられもない姿で腰を振っているのだ。何の文句があるだろう。
男を受け入れるのに慣れた、褐色の窄まりがこれ以上にないほど広がり、みっちりと雄の陰茎を咥えこんでいる。
引き抜く際、陰茎を離すまいと肉が吸い付いてくるところなどいやらしすぎて目眩がする。
とはいえ、まだ半分しか迎え入れてもらっていないことも事実だ。あえて避けているのだろうが、イルカのもっと乱れたところも見てみたい。
ちょっとした悪戯心から、彼の動きに合わせて下からくいっと腰を突き上げてみる
「あんっ! ちょっと、だめです、よ! カカシさんは何もしなくて良いって、言ったでしょうっ」
「ごめーんね。でもイルカにばっかりしてもらうのも悪いじゃない♡」
軽い気持ちで言うと、イルカがふっと眉尻を下げた。
熱に浮かされたようだった潤んだ瞳が、カカシをじっと見下ろしてくる。
「いつも、里の皆に尽くしてばっかりなのはあなたでしょう? 火影様。こんな時くらい甘えて下さい」
「せんせぇ……」
ぐっと来た。オレの恋人は何て優しいんだろう。
感動でじぃんとしているカカシにふっと微笑んだかと思うと、イルカが仰け反っていた身体を起こし、前へぐいと倒れてくる。
がに股でカカシを咥え込んだまま前のめりになったイルカが、カカシの両手をそれぞれぎゅっと握った。
「尊敬しています。六代目。いつも私たちを導いて下さってありがとうございます」
「んっ、せ、せんせぇ」
言葉と共にきゅっ、きゅっと陰茎を締め付けられ、カカシの口から甘えた声が飛び出す。
「でも、今は俺だけのカカシさんですよ♡」
「……っ♡」
感動のあまり言葉も出ない。
あまりの愛らしさに震えていると、イルカがむう、と唇を尖らせた。
「俺だって、寂しかったんですからね」
「一人でしちゃうくらい?」
「内緒です」
言い終わると同時に額へむちゅうと吸い付かれ、思わず達しそうになる。
もう我慢ならんとイルカの腰を掴もうとするが、どうしても握った指を解いてもらえない。
「だめですよ、動いちゃ」
「だってぇ」
「今夜は全部俺に任せて、カカシさんはいい子にしててくださいね……んっ、ほら、動きます、よっ」
カカシと指を絡めあったまま、イルカが尻を上下に振りたくる。
先程までよりずっと深く刺さっていて苦しいだろうに、長いストロークでカカシの陰茎を根本から先端まで抜き差ししているのだ、堪らない。
「あっ♡ 気持ちいいよ♡ 先生♡ すごい♡」
「んっ、それ、は、よかっ、た……っ! あっ、あっ、ンッ、んふぅっ」
勃起した彼のものが窮屈そうで、ビキニをずらして股間を丸出しにしてやる。ぼろんとまろび出た陰茎が、イルカの動きに合わせてびたびたとカカシの腹を打った。
充血した先端からは白濁が飛び散り、結合部からはぐちゅぐちゅと粘っこい音がひっきりなしに聞こえてくる。
イルカの全身は赤く染まり、マイクロビキニは最早怪しい文様めいて肌の上でのたうつばかりだ。
いきんで歪んだ表情も、勢い余って漏れ出る空気の音も、何もかもが愛おしい。
半開きになった口から垂れ落ちてきた唾液を舌先で受け止めてやると、蕩けた表情でイルカが笑った。
「カカシさん、だぁいすき♡」
「オレもだよ、可愛いイルカ」
崩れるように倒れてきたイルカを受け止め、舌を絡ませ合う。口づけに夢中になっている間に指をそうっと解き、ついにカカシは目的の場所へ両手を落ち着かせた。
「んっ、んうぅっ」
途端にびくりと反応したイルカの舌をじゅるりと吸い上げ、指が食い込むほど掴んだ尻肉の合間を思い切り突き上げた。
「んんんっ!!」
イルカの目が見開かれる。
焦って起き上がろうとした彼が背を反らすのに合わせて、続けざまに陰茎を打ち付けてやった。
「おっ、あ、おっ、おっ、んおぉっ、ら、らめって、言ったのに……んひぃっ」
「ん♡ オレっていい子になれないみたい♡」
「そ、んなぁ♡ あっ♡ んもう♡ おっ♡ おんっ♡ だめ♡ いっちゃう♡ いっちまう♡」
イルカがわざと避けていたらしい弱い場所を狙って擦りつけていると、しばらくして彼の身体が波打つように跳ね、カカシにしがみついてきた。
「ん、ぐぅ……っ!」
ぶしゅう、と二人の間で生ぬるい液体が噴き上げる。
精を搾り取るようにうねる中の動きにつられ、カカシも少量をスキン越しに吐き出してしまった。
「せんせ、いっちゃった? すごいよ、中、うねうねして。オレもそろそろ限界かも♡」
息を荒げ何も言えずにいるイルカの肩口にちゅうちゅうと吸い付き、ここぞとばかりに跡を残す。気づいたら怒るかもしれないが、今夜は所有欲の主張が激しい。
「ね、せんせ、イルカ、動いていい? オレの白いの、出してもいい?」
耳元で囁くと、イルカがうぅんと低く唸るような声を出して、こくこくと頷いた。
小刻みに彼の身体が震え、きゅうきゅうと陰茎が締め付けられる。
イルカが自分の声に弱いと知ってから随分便利に使わせてもらっているが、ここまで顕著な反応を見せるのも珍しい。
それだけ彼も飢えていたのだと感じ、ますます愛しさが募る。
「せんせ、好きだよ。イルカ、愛してる。ね、好きって言って?」
「んぁっ、あっ、すき、すき、す……ンンっ! あっ、だめ、またいく、そこ、じんじんするぅっ」
肌のぶつかる音が響くほど打ち付け続けていると、イルカがますます強くしがみついてくる。
その重さと熱さにうっとりとしながら、カカシは頂上を目指して動きを加速させる。
「あっ、あっ、あんっ! いく、いくぅ……!」
「っ、オレも……っ」
溜まりに溜まった熱の塊が放出される。衝動に任せてイルカの尻肉を左右に割り、これ以上ないほど奥まで己を突き刺した。
射精しながら、彼の一番狭い場所に向かってぐりぐりと先端を擦り付ける。イルカは一瞬身体を硬直させたあと、くったりとカカシにしなだれかかってきた。
「ふーっ、すっご、気持ちぃ……あれ、せんせ、だいじょうぶ?」
耳朶に口づけながら背中を撫でると、意識を失ったらしい身体がぶるりと震えた。じわあ、と腹が温かいもので濡れるのを感じる。
「おしっこ出ちゃったの? かわいい。イルカ、いい子だね」
閉じた瞼にちゅ、ちゅ、と口づける。極まった際に彼が粗相するのは時折あることで、カカシは特にそれを好んでいた。何というか、生きている感じがする。
イルカの重みと温もりを散々味わったあと、力の抜けた身体からゆっくり己を引き抜く。体力的はまだまだ回数をこなせるが、心は充分満たされていた。
「これ、もらっちゃっても良いかねぇ」
イルカの肩からずり落ちていたレースの紐をぱちんと弾き、誰にとも無くつぶやく。
汚れたから処分したとでも言えば納得してくれるだろうか。
「ん……」
汗と体液にまみれた身体を寝かせてやり、卑猥な衣装を脱がせ終わったところでイルカが小さく声を発した。見咎められる前にささっとビキニを隅へ隠し、恋人の顔を覗き込む。
「悪いね、起こしちゃった?」
「え、あ……すみません、俺……」
「いーのいーの。寝ててよ。片付けておくから」
「でも」
起き上がろうとする彼を制し、隣へ寝そべる。一人用のベッドで身を寄せ、いじらしい恋人の頬を指の背で撫でた。
「今夜はありがと。嬉しかったよ。また頑張れそ」
本心からの言葉をかけたつもりが、イルカの顔に影が差す。
「俺、何もしなくて良いとか言っておいて、結局あなたの世話になっちまってるじゃないですか」
「いいじゃない、こっちがそれで良いって言ってるんだから」
「駄目なんです、それじゃあ」
「へえ、どうして?」
目を伏せたイルカの、長い髪に指を絡める。
思案げに瞳を泳がせる彼の中にある葛藤は、やすやす吐き出せるものではないらしい。
「いいのよ、先生。会いに来てくれたってだけでもう充分。オレは幸せ者ですよ」
「カカシさん……」
「それでも気が引けるっていうんなら、今度オレの言う事なんでも聞いてくれる? もっとやらしい格好させちゃうかもしれないけど」
「何言ってるんですか、もう……。でも、良いですよ。それであなたが喜んでくれるなら」
「本当っ!? 絶対だよ! 約束だからね!」
「か、顔が怖いですって」
肩を竦めたイルカが吹き出したのを合図に、二人で笑い合う。
花が咲くようなその笑顔があれば他には何もいらない。
きっかけはシカマルからの提案であれ、多忙なカカシのためを思って行動してくれたその気持ちが何より嬉しい。己のような人間がこんな幸せを与えられて良いものかと考えるほどには満たされているのだ。
「やっぱり、後始末は朝でいいか」
「ええ、そうしましょう」
薄い肌掛けをたぐり寄せ、裸のままで抱き合う。
鼻の上を走る傷跡を唇で辿り、細く、長い息を吐いた。
終