「やぁっぱ、気まずいんだよなぁ」
「なんだよ、いきなり」

草むしり中に俺がいきなりぼやいたから、イワシが嫌そうな顔で俺を見た。
今日は一斉清掃の日で、アカデミーでも本部でも、手の空いた人間がいろんなところを掃除している。

俺は午前中は教師として生徒たちと校舎を掃除して、午後は受付として本部裏の草むしりだ。
イワシとの間にこんもり積み上がった雑草越しに、俺はカカシさんとのことをつらつらと語って聞かせた。

「それ、前も聞いたぜ。まだ続いてんのかよ」
「そうなんだよ。いくら奢ってくれるっていってもさあ、やっぱ何か気まずくてさ。何が楽しいんだろうなあ、カカシさん」
「そんなのお前、目ぇつけられてっからに決まってんだろ」
「えっ、俺なんかしたか? 中忍試験のことだったらとっくに謝ったぞ」
「そうじゃねぇよ。目っつうか手っつうかさ、お前をお手つきにしたいんだろって」
「へ?」
「だーかーら、ヤリてえんだよ、お前と。口説かれてんの!」
「ええーっ!」

思わず叫んじまったら雑草を投げられた。おい、めちゃくちゃ土がついたじゃねえか。

「声がでけぇよ、馬鹿」

馬鹿とは何だと言いたいのをぐっと我慢する。ここで言い合いになったら話が終わるって俺でもわかるからな。

「だってよ、そんなこと言われたことねえんだもん」
「しらねぇよ。あともんって言うのやめろ。気持ち悪ぃから。大体お前が鈍いだけなんじゃねえの。そんだけ奢ってもらって何もねえなんておかしいだろ。気づけよ」
「そんなこと言ったってわかんねぇよぉ」

何かすごく情けない声が出たぞ。こんなの生徒に聞かせらんねぇな。
雑草をぶちぶち引っこ抜きながら、俺はがっくりと肩を落とした。

だってさ、思わねぇだろ、普通。カカシさんが俺のこと口説いてるなんてよ。
あのはたけカカシだぞ? 里の誉、千本切り、ビンゴブックにも載ってんだ。
それに、ヤリてぇならもっと細くって女みたいな奴の方がいいんじゃないのか? そもそも女に困ってなさそうだぞ。前すんげぇ美人と歩いてるとこ見たことあるし。

でも、無理やり命令してもこないってことは、俺に誠意見せてるってことなんだよなぁ……それって、無理強いされるよりもっとたちが悪いんじゃないのか。

暗くてじめじめした場所で俯いていると、だんだん良くない方向に考えが向いちまう。
そんな俺の肩を、イワシがぽん! と叩いた。少し痛い。

「とにかく、その気がないんなら早めに振ってやれよ。それか、逃げろ」
「お、おう」

逃げろ、のところがいやに実感こもってるのは気のせいか。
それきりイワシは無駄口も叩かず真面目に草むしりを始めたもんだから、俺も黙って手を動かした。
少しずつ場所を移動しながら日なたに出ると何となく気持ちも前向きになるもんだから、俺って現金かもしれない。

ま、なるようになるか! ……それでいいのか?



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